『天気の子』について思うまま書き留める。【ネタバレ注意】
オタクは語りたがりなので語ります。
現在、私は天気の子を小説版を読破した上で5回鑑賞しています。
まず、私は新海誠監督の前作『君の名は。』に多大な影響を受けています。
君の名は。は10回ぐらい見返してるし、二次創作小説で二十万文字近くは小説を書いている。
天気の子を語る上で重要なファクターでもあるので、ざっくりと触れていきます。
この作品のおかげで私は二次創作小説を公開する『覚悟』がつきましたし、同人活動もちゃんと行うようになった。
何よりも人を動かすエネルギーに満ち溢れる作品で、音楽も映像も脚本も何もかも非の打ち所がない完璧な構成に魂を奪われたのである。
そして今作、天気の子について
『君の名は。』から三年どういう作品に仕上がるのかと期待しかない状態で待ち続けた。予告は何度も見ていたし、これこういうことなのかな?
とか推測もしていたし、グランドエスケープとか予告で使っていい曲?(すでに最高に良すぎて感動が薄れないか心配だ)とか考えていた。
そんな状態でついに訪れた公開日。
公開初日の朝九時から全国一斉スタートで見た。
『面白かったが……これは大丈夫か……?』
というのが最初の感想。後述するが、自分の中で落とし込みが足りなかった故に完全に理解が出来ていなかった。ので芸術鑑賞として楽しみきれていないのである。
個人の感想として面白かった、面白くなかったというよりも、自分以外の顧客満足度としてどうなのかが非常に気になったのだ。
監督がチャレンジャー精神なことは知っていたが、『君の名は。』を期待して見に行く層に受け入れられるのかどうか、予想がつかなかった。
賛否両論を生む作品にした、と監督インタビューで耳が痛いほど語られてるように、自分自身が気にかかったポイントについて監督が示唆したものであると知り、逆に安心する。
新海誠監督は、意味がない表現を絶対に用いないという信頼があった。
音楽の一つの音から、セリフを発するまでの間、光と影の位置関係についても全て考えた上で構成されているはずなのだ。
歌詞を聞かせるためにシーンを伸ばすということも、よく語られているので知っている方も多いであろう。
そのぐらい考えて構成されているのだから、自分が落とし込めていないに違いないと判断をする。サントラを購入し、歌詞を見ながら劇中主題歌を聞くと、これってそういうことか。と点と点で散り散りだったポイントに線が通っていく。
小説版も読破をすると、バックヤードとして映画ではカットされた箇所もよく分かる。(映画ではそこまで描くと尺が長くなりすぎる。テンポロスの関係もあるので、これを入れろという訳ではない。初見だと全てを拾うのは難しいぐらい一枚絵で情報が出ている箇所もあるとは思うけれど。映画は現状のままで完成されている)
そこで思った感想が以下である。
『須賀圭介は第三の主人公(前作主人公的でも)である』
初見時に映画での彼の行動について落とし込めなかったのが小説版を読んだことによって完全に理解した瞬間だった。
愛する妻を亡くしている彼にとって、愛する人を求めて美しくもがく帆高は過去の自分のようにも映ったことだろう。一度、駄目になってしまったとは作中でも言っているように。だから帆高に執着をするし、彼のためを思って行動をする。
快晴が東京を覆った後の彼の心情を考えるだけで涙が止まらないぐらいには好きなキャラクターである。
左手にハマった二つの指輪をなぞるシーンにも注目して映画を見ると最高に良いので何度も見ましょう。
間宮おばさんと会う時は、きちっとした格好で挑むけれど、萌花ちゃんと会う時は自分を取り繕わないので、無精髭も剃らない。そんなところも彼らしい一面。
警察に捕まった後も、『帆高……』と呟きながら空を眺めるの最高でしょ。
大人と子供の対比も今作は意識されていますけれど、だいたいどのキャラにも両方の側面が備わっていますよね。
帆高と陽菜は子供の無敵さがやっぱり強いですけれど、三年後についても少しずつ成長している。
須賀さんはそのバランスが作中で最も大人よりなのかなあとは思います(立花冨美さんはさておき)
そして、小説版を読破した上での二回目以降。
最初のモノローグから、ああ、そういうことなのかと落とし込みながら見ていく。
三年後の帆高の口調だから少し落ち着き気味なのも意識されてて流石だと思う。
K&Aプランニングの事務所前に子供用の自転車が置かれたままで、萌花ちゃんのために買ったんだろうなあとか、須賀さんの部屋にある子供用のおもちゃだったり、アア~~~~~!!!! ってなりながら見るわけです。
風たちの声が始まって、家出をしてきた帆高の真っ直ぐさを感じる歌詞だなあと。
突き進んでいくような曲ですよね。少しの危うさもあるけれど、それでも進むって感じがして良い。
終わると同時に陽菜さんの救出になり、拳銃をスカウントマン木村に向けて発砲するシーンになる。
拳銃については現実の理不尽と行き止まりに直面した時の、感情の爆発の象徴って感じがする。(後半のシーンも含めて
そこから100%の晴れ女のシーン。
祈るシーンを見ると美しいと思いつつも、このときも刻一刻と陽菜さんは自身を蝕んでいく症状に苛まれているんだと思うと感情がやられる。
そして『御宅訪問』のシーン。帆高と話しながら、「帰りたくないの?」と帆高に尋ねる。その返答を聞いたあとの陽菜の言葉が「そっか」なんですよ。とはいえこれは文字だけでは伝えきるのが難しいんですけど、凄く優しい声音なんですね。
家出少年としての帆高に対して自分の境遇も鑑みつつ、否定しない。声に出して君は正しいだとか、そういう言葉は必要なくて、黙って肯定するんです。その行動が陽菜の優しさの一面を表してますよね。
そして初の晴れ女バイトに繋がり、この時点で体の異変に気づいているかは明言されていないだろうけど、されてるほうが自然かな。晴れにするときに疲労してますしね
身を削りながらも生活のため、皆が望む晴れを呼ぶために祈るんです。
そして実際に晴れを呼び込めた時に依頼者に向ける彼女の笑顔たるや。
感謝の言葉を述べられて嬉しそうに微笑む彼女……アア。きつい。こうして文章にしてるだけで涙が止まらない。アアアアアアア。やばいでしょ。
そして『祝祭』
歌詞が全て語ってくれていることもそうなんだけど、映像が美しいのと、合間に挟まれるセリフも全部大切で。
サビでビルを光で塗り替えられていくシーンが最高に好き。
『それはまるで街が華やかな服に着替えていくようだった』
ここ!!! 帆高のセリフ!!! 劇中五本指に入る好きな言葉っていうか美しい言葉です。
それはまるで、っていうのはまず『君の名は。』オタクなら食いつかないわけがなくて。
『それはまるで――まるで夢の景色のように、ただひたらすに美しい眺めだった』
もイメージしてしまうわけなんですよね。自意識過剰かもしれないけど。こういうところも君の名は。とのアンチテーゼの要素かもしれないですよね。
『ティアマト彗星』の美しさも、陽菜の願う『快晴』の美しさも危うさを孕んでいるのは一緒だけれど、原因は全く別のものなのもそうです。
ありがとうと言われて嬉しそうにする陽菜さんの笑顔が眩しい。
誰にも話せずに自身を傷めているというのに……。
そして『花火大会』
RADWIMPSの音楽が最高に物語ってくれてるシーンです。
新海監督も言うように天気の子のサントラが天気の子の全てでもありますが、特に顕著だと思います。テレビとかでもここで特集組まれているぐらいですよね。音楽との親和性が素晴らしい。音楽と映像だけで、美しくて涙が出てしまう。
だけど、神聖さの中に少しの恐れもあるような音楽になっているあたりも流石です。
『気象神社』
さっきまであがっていた気分を落ち着かせるシーンでもありますね。
そして危うさを説明してくれるシーンでもあります。序盤の占秘館のオバサンも語ってくれてはいましたけれど、ここでそれを思い起こさせるわけですね。
そして立花冨美さんが出てきて、立花瀧も出てくる。
初見時は立花瀧が出てきた時は動揺で席から立ち上がりそうになった。
普通に考えて、全てを救った前作主人公と、世界と陽菜とを天秤かけられた状態で陽菜を選んだ帆高にぶつけてきますか??????
ここ、最高に悪趣味で新海誠監督らしいと思います(褒め言葉
この『天気の子』って作品が君の名は。のアンチテーゼでもあるのは明白なんですけど、特にココね。
比較されないわけがないでしょう、ってシーンですね。
その後に帆高が指輪を買いに行くシーンでも宮水三葉と出会うわけで、
田舎から出られない呪縛(宮水の家系と彗星による死)から立花瀧によって解き放たれた三葉をここでぶつけてきますか。そしてその三葉から指輪を受け取って、天気の巫女の呪縛にとらわれている陽菜に渡るわけですよ。なんて悪趣味なことをするんだ……(褒めています
『芝公園』
須賀さんと萌花ちゃんが出てきてほっこりする一コマ。
帆高の『あ、センパイが呼んでる……』がアドリブのような声の小ささで再現されてるあたりが好き。アドリブじゃないけど
そこから二つの告白につながって、陽菜さんの秘密が明らかになるわけだけど。
ここから一気に物語が加速していきますね。
『私たちは、大丈夫だから』と帆高に告げる陽菜さん。作中の大丈夫というセリフに注目はしてしまいますよね。
どんどん不穏な雰囲気になっていく東京。
ホテルのシーンになるわけですけど、凪くん可愛いよね。可愛くない? 可愛いですよね?
それでこのホテルで風呂に『一人で入れ!』とハモった後の陽菜さんに注目して欲しいんですけど。
流し目で帆高を見つめて幸せそうにしてるんです。マジで見てくれ。
基本的に恋する乙女的なところがガツンと描かれてはいないんですけど、陽菜さんは。
自己犠牲の心が強くて、他人に感謝される=自分を犠牲にするって法則になりつつあることも影響してそうですけど。あくまでも年上キャラであろうとしているのもあるんだろうなあ。
でも、ここだけは違ってマジで幸せそうに帆高を見つめてるんですね。ア~~~~最高ですね。この後の展開も考えるとここだけで泣けますよ。というか毎度泣くようになってしまった。
『――僕たちからなにも足さず、なにも引かないでください』
新海さんが前から使いたかったフレーズと言っているように、心に残りますよね。このセリフ。この時間が永遠だったらいいのに、だなんてありふれた言葉を、こんな風に美しく言い換えられるセンスが素晴らしい。
ホテルで帆高が陽菜さんに指輪を渡すシーンで、陽菜さんの半分透明になる体と人柱について聞かされて涙を流す帆高。
『――陽菜さんを見てる』
最高に良い言葉ですよね。君しか見つめてないですし、それ以外のことはここでは良いってことで。指輪も嵌めて、決して言葉上手じゃない言葉だけど、陽菜さんに思いの丈をぶつける帆高の必死さが凄くいい。醍醐くんの演技も最高。
陽菜さんが消えてしまって、空の上で指輪を落として一人で咽び泣く陽菜さん。
陽菜さんが弱みを見せるシーンって凄く少なくて、ここで自分しかいないから泣いていると思うと心に来る。帆高から貰ったものも一緒ならと少しは思ったかもしれないけれど、それすらも失われて、残るものはなにもない。
その指輪の行き着く先が帆高の下というのも素晴らしいですよね。
前作の言葉も使うと、陽菜さんとのムスビのためのキーパーソンなわけで。
指輪を持った上で、走り出す帆高。
警察から抜け出し、線路を走るシーンで陽菜さんとの思い出が浮かび上がる。
私たちが見ていた視点と違って、帆高の目線から見た陽菜さんが映るわけです。それが非常に可愛い姿で、そりゃ心を動かされるよ陽菜さんにってなります。
代々木の廃ビルの中、二度目のどん詰まりの状態になって、拳銃を発砲するシーン。帆高の感情があふれるシーン。それを見るのが須賀さんなのも素晴らしいですよね。
前述した対比からも須賀さんのキャラクターがここで一気に動いて、帆高に『行け』という。凪も帆高を後押しする。あのパーフェクトな少年が泣き叫びながらですよ。ああ~~~~
『君がくれた勇気だから、君のために使いたいんだ』
って歌詞が流れながら階段を駆け上がって、彼岸へとたどり着く。
そして『グランドエスケープ』
彼岸の上のシーン最高過ぎて書くことめっちゃ多くなりそうなので簡潔に纏めよう。
陽菜さんと呼びつつも陽菜! って一瞬なるシーンとか、切羽詰まったときの帆高が格好いいですよね。美しくもがく、だよホント。
歌詞も全て物語っていてくれるんですけど、帆高の陽菜に呼びかける言葉がコレ以上無い正解の言葉で。『もういい! もういいよ!』 から始まる言葉全部最高。
『青空よりも、俺は陽菜がいい! 天気なんて――狂ったままでいいんだ!』
この言葉を聞いた瞬間の陽菜さんの表情がまたなあ。最高なんだな。
自分のために願って、と告げるところも、うん、と頷くところも。何もかもが良いんだ。映像で見てこそだよって感じの象徴。
それから一気に雨が降り出す東京で、エピローグへと繋がっていくわけで。
須賀さんから世界は最初から狂ったままなんだよと気にかける言葉を貰って、
それでいいのかな、と自問自答をしながら田端駅の坂道を上っていく。
『大丈夫』が流れ出す。
そして見つける陽菜の姿。
大海原となった沈みゆく東京の街を眺めながら、彼女は祈り続けている。
その時、帆高は全てに気づくわけです。
ここが天気の子の全てが集約されているところだよなあと思う。
『大丈夫』が帆高と陽菜にとってのラブソングでもあるんですけど、
彼と彼女の在り方を物語っていて、音楽の力を感じる。
歌詞をちゃんと把握しながら聞いた時に涙がこらえきれなかった。
タイトルコールがあって、ああ、これで良いんだ。
この物語はこういうことなんだって終わらせるのも綺麗ですよね。
ここで終わってから曲が続くのも歌詞を聞けっていうことでしょうし、
エンドロールの『愛にできることはまだあるかい』も視聴後に響く。
Cメロの
『何もない僕たちに何故夢を見させたか
終わりある人生に何故希望もたせたか
何故この手をすり抜けるものばかり与えたか
それでもなおしがみつく僕らは醜いかい
それとも綺麗かい 答えてよ』
ここ、美しくもがくポイントですよね。
Mステの映像見た人が大半だと思うので記載するんですけど、
『答えてよ』の箇所で陽菜さんの顔アップにするんだけど、
やばすぎませんか。あそこ見た瞬間、涙腺崩壊したんですけど。
新海誠解釈によるアニメPV付きの映像とか公開されたら死んでしまう。
前作のスパークル original ver のMVみたいなの来たら絶対に泣き叫ぶ自信がある。
これからも期待してます。
ああ、美しいモノを見た。
そんな感情に包まれる映画だった。
天気の子は最高に良い映画です。
何度も味わう価値がある。考えさせられる映画と謳われているように、
視聴の度に発見があります。
BDで見返したい気持ちもあるけれど、
サウンドや映像的に映画館で視聴したほうが良い作品なのは間違いないので、
IMAXとかで何度も見ましょうね!!!!!!!!
ロングランしまくってくれ。
【最後に宣伝】
・天気の子も二次創作小説書いてます。
エピローグのその後の話を可能な限り公式設定から逸脱しないように書いてるので
興味があればよろしくお願いしますね。